| 指揮 | 新子菊雄 |
| 演奏 | 天理高等学校吹奏楽部 |
| 録音 | 1985年10月27日 |
| カップリング | A.リード 組曲「オセロ」 他 全日本吹奏楽コンクール自由曲名演奏シリーズ Vol.2 |
| 発売 | ブレーン |
| CD番号 | BOCD-7002 |
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「セントアンソニー・ヴァリエーション」とは、セント(聖)アンソニーのコラールを主題にした変奏曲です。 その主題の「聖アンソニーのコラール」とは何かといいますと、以前この感想でも取り上げた「ディヴェルティメント」の第2楽章のメロディーのことです。 このメロディーは、後にブラームスも変奏曲にしていて「ハイドンの主題による変奏曲」として親しまれています。 その「ハイドンの主題による変奏曲」が管弦楽用(もしくは2台のピアノ用)なのに対して、このヒルによる「セントアンソニー・ヴァリエーション」は、吹奏楽のためにつくられた曲です。 内容も、共通しているのは本当に原曲の主題ぐらいで、変奏部分は、19世紀に書かれたブラームスのものが古典的な変奏曲の形式なのに較べて、ヒルのものは、作曲が1970年代という近年でもあり、 遥かに自由度が高く、変拍子も頻繁に現れます。 さらに、パーカッションも格段に増え、全体的に華やかになっています。 さて、この「セントアンソニー・ヴァリエーション」は、一時期吹奏楽コンクールで流行りに流行ったそうなのですが、これには一つの転機がありました。 この曲は、作曲されてからしばらくは、たまにコンクールの自由曲で取り上げられることはあっても、それほど評判になることなく、まあ、知る人ぞ知るくらいの知名度でした。 それを大きく変えたのが天理高校の演奏、つまりこの演奏です。 天理高校の吹奏楽部というのは、高校の吹奏楽でもトップクラスの団体で、抜群の知名度と実力を誇っています。 そんなハイレベルの高校が取り上げるという点だけでも、十分注目を集めるのですが、さらに大きなポイントがありました。 この曲は、変奏曲という名の通り、曲の頭の方で原曲の主題が提示された後、それが次から次へと変奏されていきます。 で、本来は、どんどん変奏されて、最後はリズムが主体の、原曲とは似ても似つかぬメロディーになって締めくくられるという曲でした。 ところが、この天理高校の演奏聴いたとき、以前から「セントアンソニー・ヴァリエーション」という曲を知っていた人はきっと驚いた事でしょう。 曲の最後の最後で、本当は出てくる筈の無い原曲のメロディーが、壮大なスケールで蘇って来て、大きく曲を締めくくっているのです。 この、最後に主題が復帰する部分は、実は、作曲者であるヒル本人の変更ではなく、別の人物による編曲だったのですが、これが非常に強いインパクトを与えたのです。 もちろん、天理高校の演奏が素晴らしかったためでもあったのですが、おそらく、ぜひこのバージョンで演奏したいという希望が後を絶たなかったのでしょう、その後、この編曲はヒル本人の許可を得て、正式に出版されました。 演奏した天理高校にちなんで、通称『天理版』と呼ばれています。 これ以降、この曲は盛んに取り上げられるようになりました。 実際、この最後の部分が無かったら、わたしはこの曲をそこまで好きにはなっていなかっただろうと思います。 特に、変奏が終って静かに木管で主題が回帰され、二回目にフォルテで繰り返される時にホルンで演奏される対旋律が素晴らしいのです。 主題を一回り上回る高さで、しかもホルン特有の朗々とした音で響かせているため、あたかも、今までの世界からもう一段階高みに昇ったかのような、雄大な広がりが感じられます。 いやもう本当に、この対旋律だけでも、よくぞ書いてくれたと、編曲者に感謝したいくらいです(笑) さて演奏の方ですが、これはもう素晴らしく上手いです。 たしかに、音楽のスケールとしては少し小さく、豪快さには欠ける面がありますが、それを補って余りあるのがアンサンブルの緻密さです。 これは、最初に原曲の主題が表れる部分や中間部のサックスアンサンブルで演奏されるような静かな部分で、その実力を存分に堪能できます。 縦の線、ハーモニーがピッタリ揃っているのはもちろんの事、音符の歌わせ方一つに至るまで揃えられていて、全体が一つの楽器のように一体感があります。 特に、サックスのアンサンブルになる部分は、先行して登場する伴奏のアンサンブルも、ただ伴奏しているだけではなく、ちゃんとメロディーのように歌われていて、さらにそこに加わってくるソロのサックスが、静かながら伴奏以上に存在感があり、ゆったりとしたテンポと相まって、叙情的な雰囲気が溢れています。 そりゃまあ、CDでよく聴いているような超一流のオーケストラに較べれば粗く、音が外れてしまう時もわずかにありますが、そもそも、この団体はアマチュアでしかも高校生なんです。(ときどき忘れそうになりますが(笑)) それなのに、各奏者の技術は皆高く、さらに細かい音符まで粒がはっきりと聴き取れるぐらい揃っています。ましてや、全国大会でのライブの一発録りという点を考えると、ほとんど素人離れしていて、下手なプロオケよりよっぽど上手いのではないでしょうか(笑)(2003/9/6) |