S.S.プロコフィエフ 交響曲第5番 変ロ長調

指揮ジョージ・セル
演奏ウィーン交響楽団
録音1954年6月17日
カップリングハイドン 交響曲第93番
発売ORFEO
CD番号C 230 901 A


このCDを聴いた感想です。


 セル大暴れの巻。
 クリーブランド管を指揮した他の演奏からはとても想像できない、力で引っ張っていった演奏です。
 そうなった原因はたぶん演奏しているウィーン響の方にありそうです。
 ウィーン響は決して下手なオーケストラではないのですが、プロコフィエフの第5番という曲にあまり慣れていなかったのか、どうも怪しげなのです。冒頭あたりはまあ無難な立ち上がりですが、楽器が増えてややこしくなって来ると、自分のパートを追うのに精一杯でとても他の楽器の動きまで聞いていられない、という雰囲気がどんどん色濃くなってきます。
 そういう一歩間違えれば崩壊しそうな危ないところを、セルが力ずくで何とかまとめ上げているのです。
 テンポの速い第2楽章では、途中で足を踏み鳴らし、思わず声まで漏らしています。
 第4楽章に至っては、アレグロに入ってからのテンポを指揮棒だけで取るのをあきらめ、アレグロの頭から強く指揮台を踏み鳴らしてテンポを示しています。よほど力を入れて強く踏み込んでいるようで、かなり大きな音が出ています。初めてこの部分を聞いたときは、こんなところに大太鼓なんて入っていたっけ? と思ったほどです。
 ただ、それだけ強引に引っ張っているだけあって、演奏は非常に白熱しています。
 なんとかセルに付いて行こうと必死になっている奏者の姿が目に浮かぶようです。ほとんど遮眼革(ブリンカー)をつけた競走馬並で、他には目もくれずとにかくセルに集中しています。余裕が無いといえばたしかにそうですが、その分、緊張感は高く、さらにライブということもあって、異常なほどの熱気です。第3楽章などは本来は落ち着いた雰囲気が強いはずなのに、熱気の方が上回ってしまい、静かな部分でも気合の入った力強い雰囲気になっています。
 決して、金管をバリバリに鳴らし切った迫力ある演奏ではありません。完成度という点でも今一つどころか今二つ三つの世界です。それでも、セルのあの手この手で演奏者を引っ張っていく統率力の高さと、それについていこうとする演奏者の必死な姿は、たしかにこの演奏は聴くだけの価値があったと思わせるものでした。

 セルはこの曲をクリーブランド管とも録音しています(1959年)。セルのこの曲の演奏としてはそちらの録音の方が代表的でしょう。わたしは残念ながらまだ聴いたことがありませんが、おそらくこのウィーン響の演奏とはだいぶ雰囲気が違うのではないかと思います。(2005/12/3)


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