| 指揮 | カール・リヒター |
| 演奏 | ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 ジョン・オールディス合唱団 |
| 独唱 | ソプラノ:ヘレン・ドナート(Helen Donath) メゾソプラノ:アンナ・レイノルズ(Anna Reynolds) テナー:スチュアート・バロウズ(Stuart Burrows) バス:ドナルド・マッキンタイア(Donald McIntyre) |
| 録音 | 1972年11月 |
| 発売 | Grammophon |
| CD番号 | 453 028-2 |
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リヒターにとっては2回目の録音にあたります。 1回目はこの録音の8年前、1964年にミュンヘン・バッハ管を指揮したドイツ語の歌詞によるものでしたが、今回は、オーケストラがロンドン・フィルになり、歌詞も英語になりました。 いろいろと違いの大きい版については、CDの解説によるとどちらもペータース社の版を使用していると書いてあります。ということは歌詞がドイツ語から英語に変わっただけで、後は全く同じかと思いきや、第32曲(Thou art gone up on high)なんかは全然別の楽譜を使っていますし、ミュンヘン・バッハ管の時にはカットされていた第44〜46曲なども、今回はカット無しで全曲演奏しているなど、若干違いがあります。言語がモーツァルト版以外では珍しいドイツ語から英語になったことといい、どちらかというとだんだん多数派に近づきつつあります。 その一方で、第35曲(There sound is gone out)では、新旧録音とも多数派の合唱ではなく頑固にテナーによるアリオーソを採用している辺り、なにやらこだわりがありそうです。ちなみにマリナーも同じで、3種類の録音とも版が別々なのに全てアリオーソを採用していたりと、指揮者によっては不思議と思い入れを感じたりする曲なのでしょうか。 個人的にも、このアリオーソは好きで(特に曲の最後の方で独唱が伸ばした音からポンと跳ね上がって軽く上下するところが優しくて好きですね)、多くの演奏では合唱の方ばかりでアリオーソはなかなか採用してくれないだけに貴重です。 さて、演奏の方ですが、これぞモダン楽器による模範的な演奏と題したくなるような立派なものです。 古楽器系の多くの演奏と異なり、なにより厚い響きと力強さがあり、フル編成の利点を十分に生かしています。 さらに、響きが厚くても重すぎたり反応が鈍くなったりはしていません。テンポはそれほど速くないのですが、音を滑らかにつながずハッキリと切って、直線的で毅然とした雰囲気を保って進めています。1970年代のリヒターの演奏というと、1950年代から60年代にかけての鋭く厳しいスタイルから、流麗で良く歌うスタイルに変わってきたと指摘されることも多いのですが、この演奏からはあまりそういうスタイルは感じられません。 ミュンヘン・バッハ管との演奏からの変化としては、内に秘めていた情熱が大きく外に出て、よりダイレクトに伝わってきます。旧録音では一見地味に見えていたのが、今回の録音ではその堂々とした響きに初めて聴いた瞬間から圧倒されるという違いでしょうか。旧録音の良さが長い間わからなかった自分にも、この新録音の方は、一発で『これは大したものだ』と納得しました。 この堂々とした雰囲気は、序曲のようなオーケストラだけの曲や、合唱曲に強く表れていますが、実は、アリアのような独唱曲ではちょっと雰囲気が異なります。 堂々としているのは堂々としているのですが、合唱曲などには無かったネットリと濃厚な表情付けがあり、これには驚かされました。 そもそもオーケストラからして多少テンポを伸び縮みさせて粘っていますが、歌手はさらにワンテンポ遅れて出てきたりとそれに輪を掛けて表情濃く歌いこんでいるのです。 一定のテンポで安定している合唱曲とはかなり異質ですが、その一方で、感情に訴えかけるものも多く、全体にドラマチックな彩りをつけているという面があります。 個人的には、もうちょっとスッキリした歌い方をして欲しかったのですが、逆にこの歌い方だから良いという方もけっこう多いのではないかと思います。(2005/10/15) |